トリプルセブンの礎を築いた、信頼の厚い機体です。
ボーイング777-300は、双発機の概念を覆した「トリプルセブン」シリーズの初期モデルにおいて、胴体を極限まで延長して大量輸送に特化させた長胴型モデルです。1998年に就航したこの機体は、当時「空の女王」として君臨していたボーイング747-100/200といった初期のジャンボジェットを、より高い経済性と効率性で置き換えることを目的に開発されました。全長約73.9メートルという当時世界最長の胴体は、2026年現在の最新鋭機と比較しても圧倒的な迫力を誇り、ナローボディ機が2機並ぶほどの長大なキャビンを備えています。 技術的な最大の特徴は、双発機でありながら最大で500席以上(国内線仕様の場合)を確保できる驚異的な収容能力です。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー社製「PW4000」やロールス・ロイス社製「トレント800」などを搭載し、巨大な機体を効率よく運用するためのパワーを供給します。また、長大な胴体を持つゆえに離着陸時に尾部を地面に接触させないよう、コックピットの計器に機体後方の映像を映し出す「グランド・マヌーバ・カメラ・システム」がボーイング機として初めて採用されました。さらに、主脚には片側6輪、左右合わせて12輪の巨大なタイヤを装備し、重量を分散させることで、これほどまでの巨体でありながら既存の多くの空港での運用を可能にしています。
日本においては、B773はまさに「大量輸送時代の象徴」でした。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)が国内幹線の主力として導入し、500席を超える「国内線ジャンボ」の後継機として、東京(羽田)から札幌、大阪、福岡、那覇を結ぶ大動脈を支え続けました。しかし、2020年代に入ると、より燃費性能に優れたA350-900やB787-10への世代交代が急速に進みました。
2026年現在、旅客型としてのB777-300(ノンER型)は、多くの航空会社で退役が進み、その姿を空で見る機会は非常に希少なものとなっています。後継の長距離型であるB777-300ER(B77W)が現在も国際線の第一線で活躍しているのに対し、このB773は「双発機による大量輸送」という新たな市場を切り拓いた先駆者としての役割を終えつつあります。航空史においては、4発機の時代の終焉を決定づけ、後のB777-300ERや最新のB777-9へと繋がる「長胴型双発機」の成功を証明した、極めて重要なマイルストーンとして語り継がれる機体です。